2005年09月17日

V 法王 (The Hierophant)

V 法王

大アルカナ5番目のカードは "The Hierophant" です。直訳すると「(古代ギリシャの)神秘儀式の司祭」ということらしいのですが、伝統的な呼び名に習って、日本語では「法王(または教皇)」と呼ぶことにしています。2番目の「女司祭長」と対になるカードとして「司祭長」と呼ばれることもあります。


私がこのカードを「法王」と呼ぶのは、キリスト教のローマ法王のイメージと重ねて見るとわかりやすいからです。実際にカードのモチーフとなっているのも実在のローマ法王ではないかと思っています。

2本の柱の間に座る法王がいます。赤い法衣をまとい、三重の冠をかぶっています。右手に祝福のサインを示し、左手に三重の十字架を持っています。足元には2本の鍵がクロスして置かれています。法王の前に2人の人物がひざまずいています。

法王は神の代弁者です。神の言葉は直接地上の人間に伝えられるのではなく、法王を介して間接的に伝えられることになります。神を尊いものとして崇める気持ち(あるいは、畏怖の念)がそうさせているかに思えるかもしれませんが、実際のところ、神との直接的な接触は人間にとっては非常に危険なことであるために、法王のような存在が必要だとも言われています。時として人は「神秘体験」をしますが、その感覚におぼれてしまうと気がふれてしまい、現実世界に戻ってこれなくなってしまいます。法王は、そのような危険から人々を守ってくれているわけです。そのような解釈から、このカードには「保護(者)」の意味が与えられているのでしょう。

また、法王に与えられた神の代弁者としての地位は、それ自体が人々に畏怖の念を抱かせます。法王であるというだけで、その人物の発する言葉は全て神の言葉として受け止めなければならないのです。たとえそれが嘘であっても、「神がそうおっしゃっておられる」と言われたら、誰もがその言葉を信じてしまうのです。法王という地位そのものに人を信じさせる魔力があるわけです。このような魔力を、一般的な言葉では「権威(authority)」といいます。実際には法王も極普通の人間に過ぎないのですが、法衣をまとい、三重の王冠や杖を持った途端に、恐れ多い存在となってしまうのです。

この権威の魔力は、われわれの生活にはなくてはならないものです。あらゆる職業の肩書きは、その全てが権威と言えるでしょう。弁護士という肩書きは法律関係の権威として見られます。教師は学校教育における権威です。パイロットといえば、飛行機を操縦できる人。コックといえば、料理を作ってくれる人。占い師もまた一つの権威でしょう。それぞれの肩書きがあるおかげで、この社会は成り立っています。

しかし、同時にわれわれはそれらの権威にだまされやすいのです。白衣を着て聴診器をぶら下げた人物が目の前にいれば、たいていの人は「医者」だと思うでしょう。あなたの病気には手術が必要ですと言われればそれに従うしかなくなり、手術代には高額の費用がかかると言われれば、迷わず支払ってしまうでしょう。そうやってまんまと人をだまして金儲けをする詐欺師も世の中にはたくさんいます。権威は人をだます道具としても使われてしまうのです。そのため、この法王のカードには「嘘つき」や「詐欺師」の意味が与えられることもあります。見た目にだまされてはいけないということですね。

占星学との関連では、金牛宮(Taurus)に対応します。いわゆる牡牛座です。内向的で安定感があります。四元素では「」に対応し、非常に動きの鈍い星座宮ですが、意志が強く、じっくりと物事を実現してゆくタイプです。金銭運などとも縁があります。

愚者の旅は、秩序の生まれた世界から、物事が形式化した世界へと進んでいます。成熟した世界というのは、やがてあらゆる物事の本質を失ってゆくものなのかもしれません。

カード名 V 法王 (The Hierophant)
秘密の名前 永遠なる神の賢者 (Magus of the Eternal Gods)
星座宮 金牛宮 (Taurus)
占いにおける意味 権威。保護。助言者。思いやり。語学。安定した収入。神の英知。直感。悟り。精神的な指導。忍耐。教え。
作成日時: 2005年09月10日(土) 16:41:06

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